■表紙 ピア大阪ニュースドリーム30号 2010年2月発行 第2回ピア大阪人権講座報告 写真:舞台で講演される講師とコーディネーターの様子 ---------------------------------------------------------------------- ★内容★ ◎連載企画!!「私にとっての障害受容」パート14 ◎2009年度 第2回ピア大阪人権講座報告 ◎変わりました! 障害のある親の育児支援について ◎情報資料室コーナー ※このニュースドリーム30号では、大見出しの先頭には■、小見出しには◎を付けています。 ---------------------------------------------------------------------- ■連載企画!!「私にとっての障害受容」パート14 イラスト:封筒と1輪の花  当事者なら障害があることで一度は悩みしんどい思いを抱えたことがある人は多いと思います。障害受容ができにくい理由は人それぞれですが、何かをきっかけにもっともっと自分を好きになって楽しい人生を送ってもらいたいという願いを込めて『ニュースドリーム』では当事者の方々の障害受容をめぐっての連載をしています。14回目の今回は室井善次郎(むろい・ぜんじろう)さんです。 ◎プロフィール 名前 室井善次郎 (むろい・ぜんじろう) 職業 自由業(詩人・アフィリエイター)注:アフィリエイターとは、ブログに広告を出して報酬を得ること。 出生 1958年 大阪府生まれ 障害 精神障害(うつ病) 略歴 1993年に発病、暗中模索で闘病生活。行政・民間で精神保健福祉のサービスを受けられることを知ったのは 2002年。本格的な治療を始めたのは 2006年から。2005年結婚、2006年長女が誕生。 家族 妻・長女(3歳) ◎頑張らない、自分らしく  いつものとおり、午後6時前、イヤホンでブラームスの交響曲第1番を聴いています。横になり、じっと目を瞑り、薬が効いてくるのを待ちます。1日のリズムのなかで最もしんどい時間帯なのです。日によって違いますが、だいたい午後3時くらいから耳鳴りと動悸が激しくなり、脳が痺れているというか、うつ病の症状なのですが、頭が混乱し考えがまとまらない、気分が落ち込む、悲観的な妄想に取りつかれる、罪悪感に苛まれる等々、不愉快な症状に悩まされています。そんな中で午後5時に晩御飯を食べて食後の薬を飲み、クラシックを聴いてリラックスしようと、じっと聞き入っているのです。もう1年以上でしょうか、このパターンで過ごしてきました。これからも変わらないでしょう。その心象風景にピッタリはまるのがこのシンフォニーで、曲が終わる頃には不思議と落ち着きを取り戻しています。しんどさに耐える力をブラームスから与えてもらっているのですね。  35歳の冬2月、仕事を辞めてある資格を取ろうと勉強を始めたところでした。不注意で風邪をひき、寝込んでしまったのです。内科で薬を処方してもらった風邪薬を服用したのですが、眠くなるはずなのに全然眠れない、そのあと、地面が回る妄想に取りつかれ、怖くて怖くてたまらなかった。布団にくるまって引きこもり状態。「これはおかしい」直感的に精神に異変をきたしているのではないかと疑いました。精神科医に診てもらおうと思い、そのドアの前に立ったのですが、どうしても、クリニックの敷居は高く、中に入るのにかなりの時間を要しました。「軽いうつですね、将来に対する不安が原因でしょう」との診断、ショックでした。どうして「うつ病」なんかに襲われたんだろう、精神科に罹るなんて夢にも思わなかった。無縁だと考えていたのに……。向精神薬と睡眠導入剤の服用が欠かせない生活が始まりました。  「規則正しい生活をして、しばらく休んだらええやないか、ちょうど梅の時期や、大阪城公園でも行って来い」外に出ようとしない息子に母は半ば強制的に促しました。2月23日は父の3回忌。このころになると薬が効いてきたのか、急性期からほんの少し脱し、当初より、若干安定した気分になっていました。1日のスケジュールを決めて生活を送るよう心がけ、できるだけ外の空気に触れるように工夫したのです。  そんな中で、3月27日、母の70歳の誕生日がやってきました。普通に朝御飯をともにして、いつものことながら馬鹿話に花を咲かせたのです。そのあと、30分ほど自分の部屋で用事を済ませて戻ってくると、母が仰向けになって意識がありません。何度呼んでも反応がない、すぐさま119番。救急隊員が来るまでの間、心臓マッサージと人工呼吸の繰り返し、病院では必死の心肺蘇生術が施されましたが、すでに時遅し。突然逝ってしまいました。  私には兄弟がいなかったので、まさに「孤立無援」。焦って「何か職を見つけなくては」、病気を隠して就職活動、運よく採用されて仕事が始まるのですが、病気の症状、つまり意欲が湧かない、集中力が長続きしない、疲れやすい、休日明けの月曜日になると仕事に行く気がしない、いろいろ理由をつけて欠勤する。そんな不真面目な社員を雇い続ける会社などありません。当然、クビを言い渡されます。自分から諦めて辞めたことも何度あったことか。  そういったことを繰り返すわけですから、当然ながら経済的に追い詰められていきます。蓄えもどんどん減ってゆく、一人悶々と悩む毎日。「もう、人間失格やな」ふと自殺を考えたりもしました。大学時代の同級生が何か感じるものがあったのか、「お前、しょうもないことしたら俺らの友情は終わりやぞ」この言葉がどんなに辛い時でも支えになり、短絡的な行動にブレーキがかかりました。苦しい時に手を差し伸べてくれる友人こそ本物の親友なのですね。  心に病を持つ人にとって、良いドクターに巡り会うことはとても難しいのです。長時間待ったにもかかわらず、診察はものの1分程度。症状だけ聞いて何のカウンセリングもせず処方箋を書くだけ、結構このような精神科医は多いのです。「また仕事辞めたん、そしたら別の仕事探したらええやん」と冷たくあしらわれました。思いやりのかけらもない言葉。悩み苦しんでいる精神病患者に対して、何とデリカシーのない医者、落ち込むと同時に怒りさえ込み上げてきたのを憶えています。  何年かして、ある方から、良い診療所が、それも意外と近くにあることを教えていただきました。そこで、初めて、ソーシャルワーカーさんがいてドクターの診察とは別にこちらの病状や生活の不安、心配事など聞いてくれ、アドバイスをしてくれるのです。その他、デイケアや作業所があること、行政や民間の機関があって精神保健福祉のサービスがいろいろ整っていることなどを知りました。精神障害者保健福祉手帳もこの時に交付してもらったのです。気がつけば保健福祉センターの相談員さんとはもう顔馴染み。  2006年から2008年までの間に、状態が思わしくなく、4回も入退院を繰り返しました。  その時の主治医が信頼できると判断したので、現在も診てもらっています。私の考え方の癖を理解して心から納得できるカウンセリングを施してくれるのです。  真面目過ぎる、完璧主義、全か無か思考、感情的な決め付け、それに基づいた思い込み・妄想、これらがどんどん自分を追い詰めてしまうのです。「100点満点を取ることはない、欠点取っても大丈夫」くらいに考えて、「このあたりで十分だ」と妥協して生活を送るように改善しました。恒常的に倦怠感があって、しんどいのですが、その中でも出来ることはあるはずです。失敗を恐れて何も行動しないのは一番良くないと思い、とりあえず、何でもいいからやってみる、試してみる、途中で辛くなったらやめればいい。そこで大事なことは、完璧にできなかったといって自分を責めない、自己嫌悪に陥らないことだと決めて行動に移しました。失敗しても「まあ、仕方ないな」程度に思って、ちょっと休んで、また欲が出てきたらチャレンジすればいい、という具合に進めていくと、意外と出来ることが多いことに気付いたのです。それに人間、「慣れる」習性があるので、続けていけば最初に感じたしんどさも徐々に軽減されていくことも発見しました。試してみて、成功の経験をすると自信につながります。そのひとつひとつの積み重ねが生活に充実感を与えてくれるのですね。かといって調子に乗ってやり過ぎると倒れてしまいます。何にも出来ないわけではないけれど、何でも出来るわけではないのですから。  オーバーヒートして寝込んでも、しっかり休養を取って冷却すれば必ず回復します。自分を信じて待つことも時には必要ですね。しんどい時に答えを出そう、結論を出そうと慌てないことが重要なポイント。  このような「実験」を通して等身大の自分が見えてくる。その領域でベストを尽くせばいいのではないでしょうか。  もうひとつ、思いを巡らせるとすれば、その日のエネルギーを全部使いきらないことですかね。60か70%の力を使って残りは明日へ回す、余力をためて明日に備えることも大事な観点だと思います。病気と「闘う」のではなく、うまく付き合って「共生」すればより豊かな生活を送ることができることも知りました。  いろいろなかっとうの中でこのような思考が出来るようになったのも、当然ながらドクターのお陰ですが、こんな私でも結婚できて、子どもまで授かることができました。ほんの少しだけれど頑張れるようになったのも妻と娘がいてくれたお陰なんです。それに結婚も「病気」になったから出来た、妻とは病院で知り合ったわけですから。「病気」にならなかったとすれば、薄っぺらい、つまらない人間になって、真の意味での「生きる」喜びなんて感じられなかったと思います。「うつ病」に感謝ですね。  最後に青山テルマさんの曲「リズム」の歌詞を紹介して結びとします。   「ごめん、昨日超えること出来なかった   ごめん、今日も飛べるかわからないけど   自分らしく生きるリズム刻もう   明日から、また、歩き出そう」  イラスト:先に星のついた杖をもつ妖精 ---------------------------------------------------------------------- ■2009年度 第2回ピア大阪人権講座報告 「高次脳機能障害について」〜現状と今後の課題〜 講師 比嘉由隆(ひが・よしたか)さん 〈肢体障害の当事者 ピアカウンセラー〉 吉岡晋平(よしおか・しんぺい)さん 〈高次脳機能障害の当事者〉 西川祐子(にしかわ・ゆうこ)さん 〈大阪市更生療育センター 言語聴覚士〉 コーディネーター 久保博康(くぼ・ひろやす)さん 〈大阪府障害者自立相談支援センター 課長〉 日時 2009年9月19日(土)13:30〜16:30 場所 大阪市立早川福祉会館 4階第3会議室(ホール) 参加者 74名  最初に久保(くぼ)さんより概要説明があった。  高次脳機能障害とは、病気や事故などのさまざまな原因で脳の一部が損傷を受けた結果、記憶・注意・思考・言語・行為・感情といった高度な脳の働きに障害が現れる場合があり、このような高度な脳の働きの障害を「高次脳機能障害」と呼ぶ、との説明があった。高次脳機能障害の特性・位置づけ・診断基準・評価・課題・訓練の基本的内容についての話があり、次に大阪府脳損傷実態調査について、大阪府民の脳損傷の発生は、年間13,186人と推計。大阪府の高次脳機能障害の発生頻度については、64歳以下の年間発生は1,106人、人口10万人あたり14.8人と推定される、との話があった。また、大阪府高次脳機能障害支援普及事業について、大阪府の高次脳機能障害支援拠点機関は、障害者医療・リハビリテーションセンターで@相談支援業等 A普及・啓発事業 B支援拠点機関全国連絡協議会への協力を行っている。高次脳機能障害支援の今後に向けて@当事者・家族が安心して居住する地域において相談支援を受けられる体制の確立 A府内8圏域で、高次脳支援地域会議を開催 B圏域別高次脳支援地域ネットワーク資源マップの作成を行う予定、との内容だった。  写真:マイクを持って話す久保(くぼ)さん  西川(にしかわ)さんの発表  大きく次のような3点の話があった。  高次脳機能障害とは記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害で、自分の障害に気付かない(自己認識力の低下)ことと疲れやすいとの特徴がある。  次に支援プログラムには、@本人の能力アップとして認知訓練・生活訓練・職能訓練があり、代償手段の獲得は自分で工夫できるようにする。A生活しやすくする支援(周りへのアプローチ)として環境調整、家族支援がある。B社会生活への支援には、支援の連携と様々な社会生活のなかでの支援がある。  写真:マイクを持って話す西川(にしかわ)さん  最後に、大阪市更生療育センターでの支援の紹介。事業内容:入所での支援として、施設入所支援・自立訓練(機能訓練)があり、通所での支援として通所肢体訓練事業と通所言語訓練事業がある。   支援内容:@認知機能の向上 A日常生活訓練 B代償手段の獲得 C自己認識力の向上 D環境調整 E家族支援 F社会生活へ、とある。入所での訓練は、個別訓練とグループ訓練に分かれている。個別訓練は、ビーズ細工・編み物・パソコン入力・電卓計算・漢字を覚える、がある。グループ訓練は、計画実行グループ・記憶法練習グループ・メモの習慣化グループ・新聞グループ、がある。通所での支援は、社会生活での代償手段活用(メモ帳・携帯電話等)であり、一人暮らしに向けては必要な情報・支援を考える支援機関を探す、があるといった紹介があった。  比嘉(ひが)さんと吉岡(よしおか)さんの発表  写真:話をされる比嘉(ひが)さん  進行役の比嘉(ひが)さんの挨拶と自己紹介があった。自己紹介の中で、最近、比嘉さん自身も高次脳機能障害と診断をされたとのことだった。比嘉(ひが)さんと吉岡さんの対話形式で発表が進んだ。吉岡さんの障害についてと、受傷前の話。バイク事故後どうなったのか。また、九州で利用していた授産施設での内容の話。帰阪後、友達〈比嘉(ひが)さん〉と再会、そして障害者生活支援センターとの出会い。自立生活プログラム〈ILP(アイエルピー)〉で短期目標達成(一人暮ぐらし)したときの話があった。現在は、中期目標(仕事探し)が進行中とのこと、また長期目標は結婚するという内容だった。  写真:マイクを持って話す吉岡(よしおか)さん  次に高次脳機能障害はどんな障害か、との話で障害者になって思うこと・感じることの内容だった。やけを起こさなかった、そしてあきらめなかったことが大変大きかったと、出会いの重みについての話があった。とくに、二人が強調されていたことは、メモの必要性、重要性だった。全体的に終始、和やかな、温かい会話が続き、笑いもあり、会場全体が優しい空気に包まれていた。  写真:左に比嘉(ひが)さん、右に吉岡(よしおか)さんが並んで座っており、対話されている様子  まとめ  まだまだ高次脳機能障害は理解されていない。家族や支援するところに理解してもらうことが大切。比嘉(ひが)さん、吉岡(よしおか)さんに共通していたのが、あきらめなかったこと。自分の可能性を信じて、自分ができること、したいことを実現していくことが重要。最後に、出会いの重みで、どこでどう出会うか、またそこから新たなつながりができることが大事であるとの話だった。 ---------------------------------------------------------------------- ■変わりました! 障害のある親の育児支援について 障害者生活支援センター・いきいき 谷口 由里子(たにぐち・ゆりこ) ◎ニュースドリーム 22号(2008年9月発行)に、「一人の母親として思うこと〜保育所送迎ガイドヘルプをめぐって」という文章を谷口由里子さんから寄せていただきました。去年の7月に厚生労働省から育児支援について変更が出されたということで、再び谷口さんから原稿をいただきました。以下に掲載します。 ◎2009年7月10日、厚生労働省より “障害者自立支援法上の居宅介護(家事援助)等の業務に含まれる「育児支援」について ”という事務連絡が出されました。これにより、障害のある親の育児支援が居宅介護の位置づけで、広範囲に認められたことになります。  私は 2006年の春、視覚障害をもつ親として、子どもの保育所送迎の制度利用を認めてもらえるよう行政に呼びかけした経験があり、その結果、大阪市の移動支援の特例として介助が使えるようになりました。その呼びかけをする際に見つけたのが以下の「支援費制度関係Q&A集」〈平成15年6月厚生労働省社会 援護局障害保健福祉部障害福祉課(抜粋)〉でした。 ◎(問19)育児をする親が十分に子どもの世話ができないような障害者である場合に、家事援助を行う従業者が、育児援助の観点から行う沐浴や授乳等は支援費の算定対象となるのか。   (答) 家事援助中心として支援費の対象となる。なお、日常生活支援中心として行われた場合も支援費の対象となる。 ◎これは障害者の介助制度がまだ支援費制度の頃に出されたQ&Aです。当時、私の住む区の窓口や大阪市、国にも確認して、この問答集が障害者自立支援法になってからも生きているのか尋ねたところ、生きているとのことで、さらに保育所送迎が「沐浴や授乳等」の「等」に該当するのではないかと質問すると、保育所送迎は家事援助ではないので該当しないとの答えでした。  今回出された事務連絡は、これまで「沐浴や授乳等」だけであとは自治体の判断に任せていたものを改めて周知しています。  以下厚生労働省から各都道府県障害保健福祉主管部(局)あての2009年7月10日付の事務連絡を抜粋します。 ◎【居宅介護(家事援助)、重度訪問介護の業務に含まれる「育児支援」】  (これまでQ&A等で示していた具体例)   育児支援の観点から行う「沐浴や授乳等」    ※ 「沐浴や授乳等」の「等」については、以下ののように具体例を挙げている。      @乳児の健康把握の補助      @児童の健康な発達、特に言語発達を促進する視点からの支援      @保育所・学校等からの連絡帳の手話代読、助言、保育所・学校等への連絡援助  (その他、対象範囲に含まれる業務)      @利用者(親)へのサービスと一体的に行う子ども分の掃除、洗濯、調理      @利用者(親)の子どもが通院する場合の付き添い      @利用者(親)の子どもが保育所(場合によっては幼稚園)へ通園する場合の送迎    ※ 利用者(親)が本来家庭内で行うべき養育を代替するものであり、次の(1)から(3)ののすべてに該当する場合に、個々の利用者(親)、子ども、家族等の状況を勘案し、必要に応じて、「居宅介護(家事援助)」又は「重度訪問介護」の対象範囲に含めるものとする。     (1) 利用者(親)が障害によって家事や付き添いが困難な場合     (2) 利用者(親)の子どもが一人では対応できない場合     (3) 他の家族等による支援が受けられない場合  イラスト:赤ちゃんを前に、哺乳瓶を左手に持ち、右手で頬づえをついて困った表情のお母さんの様子 ◎これらは居宅介護における考え方なので、保育所送迎や子どもの通院については、利用者は家にいる状態でヘルパーが単独で子どもの送迎等を行うということを指しています。つまり移動支援のように利用者が子どもと共に歩いて、ヘルパーがそのサポートをするという形ではありません。  2008年4月に移動支援で送迎が認められてからも、毎日の送り迎えや保育所の行事だけで支給されている時間数を超えるので、家事援助でも保育所送迎を使えないか相談したこともありますが、国では認められていないので無理ですと一辺倒な答えしかもらえませんでした。  悔しい思いをしていたのはもちろん私だけでなく、障害をもつ親たちは皆、子育てに介助を使えないジレンマに常に悩まされていました。介助派遣事業所から、親の食事は作るが子どもの食事は作らないと言われた人、介助で子どもを病院に連れていくことは出来ないと断られた人、大阪市で保育所送迎の介助は移動支援では認められているが重度訪問介護の利用者は無理ですと窓口に言われた人、子どもは欲しいけど子育てに介助が使えないから諦めている人…etc(エトセトラ)。  これは介助派遣事業所や市町村の窓口対応に問題があったわけではありません。すべては、育児支援とはこういう内容のものを指すといったはっきりした指針が障害者自立支援法にまったく書かれていなかったことが問題だったのです。  少子化が叫ばれる昨今、出産一時金が増額したり使いやすくなったり、子ども手当ての給付が予想されたりと、様々な対策がなされています。また障害児を扶養する親に対する制度も、まだまだ不足してはいますがいくつかは見当たります。しかし障害をもつ親が利用できる子育て支援の制度はほとんどありませんでした。どんなに大変な状況でもすべて自分たちの努力に委ねられてきました。そこには大きな不安や危険が常に存在し、親としての自信を失いかけることもしばしばありました。障害者が出産し子育てをすることが、そんなに珍しいことでしょうか。障害があっても恋もするし結婚もします。子どもだって生まれます。そんな当たり前のことがこれまで認められてこなかったことに大いに疑問を感じます。今回の政権交代により、障害者自立支援法も廃止の方向に向かっていくと思われますが、障害をもつ私たちの個々のニーズをきちんと受け止めてくれる制度になるよう、子育て中の障害をもつ親としてこれからも声を上げていきたいと思います。 ◎編集部注:大阪市でも厚生労働省の通知を受けて 2009年8月11日付の大阪市健康福祉局自立支援担当課長から各区保健福祉センター福祉業務主管課長あての事務連絡で今後の取扱いを変更しています。以下要約します。  従来、利用者(親)の障害により子どもの保育所等への送迎ができない場合について、健康福祉局との協議により特例的に移動支援事業での対応を可能としていたが、今回の通知により次のとおり取扱いを変更する。  @現在、特例的に移動支援での送迎を認めているケースについては、引き続き移動支援での対応とする。  @今後新たに申請があった場合については、   (1)保育所・幼稚園への送迎をヘルパーだけで行なうのか、ヘルパーと親とで行なうのかを確認する。   (2)ヘルパーのみで送迎を行なうのであれば居宅介護(家事援助)または重度訪問介護で決定する。(局への協議は不要) ヘルパーと親とで送迎を行なう場合については、移動支援での対応について局と協議する。   (3)「家事援助」で決定するにあたり支給決定基準時間を超える場合については、非定型協議案件として局との協議を行なう。  イラスト:笑顔の赤ちゃんを抱っこする、笑顔のお母さん ---------------------------------------------------------------------- ■情報資料室 コーナー  つぎのような図書資料が情報資料室に入っています。ご利用ください。  書名 (整理番号) 著者 出版社 発行年月 ページ数 税込価格 の順に記載。 ★『高次脳機能障害者の世界―私の思うリハビリや暮らしのこと』 (4311) 山田規畝子(やまだ・きくこ) 著  協同医書出版社  2009年1月  152ページ  1890円 ★『理解できる高次脳機能障害』 (4321) 中島恵子(なかしま・けいこ) 著  三輪書店  2009年4月  111ページ  1890円 ★『 Q&A脳外傷 第2版 ―高次脳機能障害を生きる人と家族のために』  (4320) NPO法人 日本脳外傷友の会編(エヌピーオーほうじん・にほんのうがいしょうとものかいへん)  明石書店  2007年2月  155ページ  1470円 ★『ゆびさきの宇宙―福島智・盲ろうを生きて』 (4315) 生井久美子(いくい・くみこ) 著  岩波書店  2009年4月  262ページ  1890円 ★『さとしわかるか』 (4332) 福島令子(ふくしま・れいこ)著  朝日新聞出版  2009年5月  225ページ  1680円 ★『手話の世界を訪ねよう』 (4325) 亀井伸孝(かめい・のぶたか) 著  岩波書店(岩波ジュニア新書)  2009年6月  219ページ  819円 ★『聴覚障害児・者支援の基本と実践』 (4322) 奥野英子(おくの・えいこ) 著  中央法規  2008年3月  249ページ  2940円 ★『障害者の「自立生活」と生活の資源―多様で個別なその世界』 (4326) 田中恵美子(たなか・えみこ) 著  生活書院  2009年7月  441ページ  3570円 ★『発達障害当事者研究―ゆっくりていねいにつながりたい』 (4318) 綾屋紗月(あやや・さつき)・熊谷晋一郎(くまがや・しんいちろう) 著  医学書院  2008年9月  219ページ  2100円 ★『良い支援?―知的障害/自閉の人たちの自立生活と支援』 (4316) 寺本晃久(てらもと・あきひさ)・岡部耕典(おかべ・こうすけ)・末永弘(すえなが・ひろし)・岩橋誠治(いわはし・せいじ) 著 生活書院  2008年11月  293ページ  2415円 ★『ケアと共同性の人類学―北海道浦河赤十字病院精神科から地域へ』  (4313)  浮ヶ谷幸代(うきがや・さちよ) 著  生活書院  2009年5月  379ページ  3570円 ★『障害受容再考―「障害受容」から「障害との自由」へ』 (4331) 田島明子(たじま・あきこ) 著  三輪書店  2009年6月  212ページ   1890円 ★『障害者総合福祉サービス法の展望』 (4328) 茨木尚子(いばらき・なおこ)・大熊由紀子(おおくま・ゆきこ)・尾上浩二(おのうえ・こうじ)・北野誠一(きたの・せいいち)・竹端寛(たけばた・ひろし) 編著  ミネルヴァ書房  2009年7月  348ページ  3150円 ★『ケーススタディ 障害と人権―障害のある仲間が法廷を熱くした』 (4314)  障害と人権全国弁護士ネット 編  生活書院  2009年4月  355ページ  3150円  ピア大阪の情報資料室には、今回ご紹介した図書資料以外にも障害者問題に関するさまざまな本や資料が約4300冊あります。  貸し出しは無料です。おひとり2冊まで、2週間借りることができます。  お気軽におたずねくださいね。  イラスト:本を読む女の子 ---------------------------------------------------------------------- ■編集後記 ★『ピア大阪ニュースドリーム』30号をお届けします。新しい年、2010年も 2ヶ月が過ぎようとしています。皆さまにとって良い年でありますように。 ★ピア大阪では、新年早々、企画の目白押しです。寒さに負けず、事務局一丸となって頑張っていきます。 ★『ピア大阪ニュースドリーム』の購読を希望される方は、お気軽にピア大阪までご連絡ください。購読会員の方は、次年度分の年間購読料の振り込みをよろしくお願いします。なお、点字版・テープ版・テキスト版も作成しています。ピア大阪のホームページでもご覧になれます。 (Y・N) 2010年2月25日 編集 社会福祉法人 大阪市障害者福祉・スポーツ協会 自立生活支援センター・ピア大阪 〒546−0033 大阪市東住吉区南田辺1−9−28 大阪市立早川福祉会館内 電話 06−6622−1180 ファックス 06−6622−0423  ホームページ http://www.fukspo.org/peerosk/ 年間購読料500円