■表紙 KSKQピア大阪ニュースドリーム17号 2007年11月発行 二人一緒でもぬれない傘!楕円形の大きな傘!!三原さんともう一人がラクラク入れる「ツインアンブレラ} 表紙写真 三原(みはら)さんと女性がツインアンブレラをさしてニッコリしている様子 ●お知らせ● 2007年度第4回ピア大阪人権講座「情報障害者の現状と課題」 日時:2007年12月15日(土)13時半〜16時半 場所:大阪市立早川福祉会館4階ホール 内容:視覚障害者と聴覚障害者の日常的困難さ ------------------------------------------------------------------------------------------------------ ★内容★ ◎新連載企画!!「私にとっての障害受容」パート4 森美恵(もり・みえ)さん ◎こんなのあったんだぁ〜☆コーナー ツインアンブレラ ◎情報資料室☆コーナー ◎障害者自立支援法、与野党とも大幅な見直しを検討 ◎お知らせコーナー 廃止になりました「大阪市重度障害者給付金」 ◎付録「2007年度第4回ピア大阪人権講座」のチラシ ◎付録「ぴあふれんず企画 お見合いパーティー」のチラシ ※このニュースドリーム17号では、大見出しの先頭には■、小見出しには◎を付けています。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------ ■連載企画!!「私にとっての障害受容」パート4 イラスト 封等と一輪の花 当事者なら障害があることで一度は悩みしんどい思いを抱えたことがある人は多いと思います。障害受容ができにくい理由は人それぞれですが、何かをきっかけにもっともっと自分を好きになって楽しい人生を送ってもらいたいという願いを込めて『ニュースドリーム』では当事者の方々の障害受容をめぐっての連載をしていきます。第4回目はピアカウンセラーとして活動されている森美恵(もり・みえ)さんです。  ◎プロフィール 森美恵(もり・みえ) ピア大阪ピアカウンセラー 33歳の時、統合失調症(とうごうしっちょうしょう)を発病する。 37歳の時、詩作・文筆活動を始める。著書『心を乗っとられて』潮文社(ちょうぶんしゃ)『<心の病>をくぐりぬけて』岩波(いわなみ)ブックレット『なんとかなるよ統合失調症』解放出版社(かいほうしゅっぱんしゃ) 2006年度精神障害者自立支援活動賞(リリー賞)受賞 2007年度糸賀一雄記念賞(いとが・かずおきねんしょう)受賞 全国各地で講演活動を行なっている。 「講演依頼がありましたらピア大阪までご一報下さい。よろしくお願い致します」 ◎タイトル シングルマザーで精神病!だけど私は夢をかなえる  今、私はあこがれの詩人、谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)さんと同じステージに立っている。ひざが少し、がくがくする。声が震えているのもわかる。白いソファに腰掛けると対談が始まった。緊張しているけれど、とてもわくわくしている。  私はやっぱり精神病になって良かった。統合失調症(とうごうしっちょうしょう)にならなければ、谷川(たにがわ)さんにお目にかかることもなかっただろうし、このドキドキする夢のような時間を持つこともなかったに違いない。「精神病になって、ラッキー!」と心の底から初めて思った瞬間だった。この瞬間、自分から進んで喜んで障害を受容できたように思う。  私は33歳の時、統合失調症(とうごうしっちょうしょう)を発病した。この病名を自宅にあった古い医学辞書で調べてみると、「早発性痴呆症(そうはつせいちほうしょう)」という表記があった。当初は「精神分裂病(せしんぶんれつびょう)」と呼ばれ、不治の病、最悪の場合は廃人になってしまうという誤った先入観に人々は支配されていた。正しい医学知識を持っていなかった私は自分の人生はこれで終わりだと思った。知的な作業はどんどんできなくなり、いずれは言葉も話せなくなり、一人寂しく精神病院で死んでいくのだと先々のことを考え、絶望した。  それから、34歳の時に閉鎖病棟に入院。生死の境をさまよい、なんとか退院はできたものの、退院した私を待っていたのは嫁ぎ先からの離婚宣告だった。病み上がりの体でふらふらになりながら、調停に通った。また、この間、病状も悪くなり、三度も自殺未遂を図った。もし、あの時死んでいたら、それはそれで苦しみの少ない人生であったかもしれないが、同時に何の実りもない人生であったに違いない。  調停の結果、私は次女を引き取ることができたし、長女とも自由に面会をする権利も得た。そして、発病してすでに16年たつが、幸運なことに廃人にもなっていなければ、言葉を失ってもいない。むしろ、少しずつではあるけれど、一歩一歩前進し、小さな夢をかなえつつある。  現在は週に2回、近所の子供たちに英語を教え、ピア大阪でピアカウンセリングの仕事をしている。しかし、ここに到るまでの道のりは決して平坦なものではなかった。病気がだいぶ良くなり、社会復帰したいと思った時、正直にこの病名を告げて、雇用してくれる会社はまだ非常に少ないだろう。私は病名を隠して、働かざるをえなかった。そして、何度も何度も挫折した。一般企業でフルタイムで働くことが体力的にも精神的にも自分には無理だということがわかった時、私は自分が社会的に死んでしまうことをおそれた。病気は私の命を奪いはしなかったが、社会的生命を奪い、人間としての自立を阻もうとしている。  経済的に逼迫した状況の中で私は二度目の絶望感を味わった。「働かざる者、食うべからず」父のはなった言葉が胸に深くささり、のどに魚の骨がひっかかっているような感じで、食事ものどを通らない。自分の障害を受け入れることもいやいやながらやっとの思いでというところが本当で、とても病名をアピールしていこうという気持ちにはなれなかった。  それでも私は自分の可能性をあきらめたくはない。自分らしくあるいはこの病気でも自分にしかできない何かがあるはずだと暗闇の中を模索した。  私は発病前に取得していた英検準1級の資格を生かすことができる塾の英語講師の仕事を見つけた。夕方からの2、3時間の勤務はこの病気の私の体内リズムにマッチしたようである。  それから、発病後、書き続けていた詩を潮文社(ちょうぶんしゃ)に送り、『心を乗っとられて』という詩集を上梓することもできた。しかし、この本の著者プロフィールに私は自分の履歴などプライバシーにかかわることを書くことはできなかった。やはり、精神病なので、世間体が悪いし、家族に迷惑がかかると考えていたからである。私自身は障害をなんとか受容できても世間や社会がこの病気を受容してくれることなどありえないと思っていた。たとえ、カミングアウトしても偏見の目にさらされ、こっぱみじんに自分が砕け散ってしまうことを想像した。けれども、誰もこの病気だから出ない、出ないから偏見差別が根強く残っているという悪循環はいずれは誰かが口火を切って、打破していかなければならないのではないだろうか(それが自分にできるかどうかは別として、一つの捨石になってもいいという覚悟のようなものができたのである)。  潮文社(ちょうぶんしゃ)の『心を乗っとられて』を読売新聞の記者の原(はら)さんに送ったころから、私は少しずつ考えを変え始めていた。読売新聞の医療コーナーに「統合失調症(とうごうしっちょうしょう)とともに」を連載し始めたころ、自分の中に少しずつではあるが、闘志のようなものが芽生え始めたようである。連載は大きな反響を呼び、26回続くことに。そして後に岩波(いわなみ)ブックレットから『<心の病>をくぐりぬけて』というタイトルで刊行される。  人前に顔をさらす勇気さえなかった私が講演活動を始めた。東京、沖縄、香川など全国各地を回る講演活動も60回を越えた。そして、半生記『なんとかなるよ統合失調症(とうごうしっちょうしょう)』を解放出版社(かいほうしゅっぱんしゃ)より出版。去年は精神障害者自立支援活動賞(リリー賞)を受賞させていただき、今年は糸賀一雄記念賞(いとがかずおきねんしょう)を頂くこともできた。しかし、給料は自活できるに十分なものではないので、私はいまだに親に寄生するパラサイトシングルである。  けれども、障害を受容し、自分らしく、笑顔で毎日生きることができたなら、それはそれなりにハッピーでその後はまた夢の続きを見続ければいいのだ。『シングルマザーで精神病!だけど私は夢をかなえる』まだ刊行できるかどうかわからないが、私の4冊目の本のタイトルである。  「この道を行けば、どうなるものか危ぶむことなかれ。危ぶめば、道はなし。踏み出せば、その一歩が道となる。迷わず行けよ。行けばわかる」(一休和尚(いっきゅうおしょう)) 絵 森美恵(もり・みえ)さん 左側ネジリバナ 右側トンボの置物  ------------------------------------------------------------------------------------------------------ ■こんなのあったんだぁ〜コーナー ツインアンブレラ 二人一緒でもぬれない傘!楕円形の大きな傘!!  先日、雨の日に視覚障害の方がガイドヘルパーと一緒に大きな傘をさして歩いているのを初めて見ました。「あんなに大きな傘があるんだぁ〜」「二人で一緒に入れて便利そうな傘だなぁ〜」と思い調べてみると「ツインアンブレラ」というものでした。みなさんは、ご存じですか? そこで、火曜日に視覚障害者のピアカウンセラーとしてピア大阪にお来しいただいている三原(みはら)ひろみさんが実際に利用しているということでしたのでメリットやデメリットについてお話を聞きました。(杉井すぎい) 写真 折りたたみツインアンブレラの表側と裏側 ●ツインアンブレラ 楕円形のワイドな手開き式の長傘です。傘の幅は120cmと広いので、二人で入っても雨にぬれずに安心して歩けます。視覚障害の方がガイドヘルパーと一緒に歩くときに便利な傘です。 色は、紺、グレーなど数種類あります。(2600円) ●折りたたみツインアンブレラ 折りたたみ式の楕円形のワイドな傘です。傘の幅は105cmと一般の折りたたみ傘に比べ横に広いので、二人で入っても雨にぬれずに歩けます。折りたたみの関節が3段式ですので、とても小さく折りたためます。(2900円) ※日本点字図書館用具事業課のホームページより ◎メリット&デメリット  まず、視覚障害者が手引きをしてもらって雨の日に歩く時どうするかについて触れてみようと思います。視覚障害者は手引きを受ける時、相手の腕や肩を持ち、半歩後ろを歩く形になります。雨の日はお互いレインコートを着る場合もありますが、一つの傘を二人でさす場合もあります。雨の状態やその人によっても異なります。  さて、私がこのツインアンブレラと出合ったのは昨年10月末でした。それを初めて見た時「こんなに大きな傘だったらお互いあまりぬれなくてすむなぁ〜」と思いました。実際使ってみて、横も楕円形なので横降りの雨でなければ肩などはぬれないし、後ろのリュックも今までよりはぬれないと感動しました。  大きいのは便利でありがたいのですが、困ることもあります。例えばこの傘は先の部分が二つあるため、普通のものより太くて重いです。傘立ての穴の大きさが小さいものや、鍵付きのものには入らないこともあります。また、使わない時に持っているのも重いですが、長い間傘をさしていると腕がだるくなってきます。  この傘、本当に大きいのでいろいろな形で使えるのではないかなと思います。車椅子の人が、あの楕円形に長いのを縦に使うと、車椅子も多少はぬれを防ぐことができるかなぁ〜と思います。また、介助者と一緒であれば車椅子の後ろからさすことができ介助者も一緒に入れるのではないかと思いました。 〔 用具のご購入・お問い合わせ〕 ●日本点字図書館用具事業課 〒169-8586 東京都新宿区高田馬場(とうきょうとしんじゅくくたかのばば)1-23-4 日本点字図書館 電話 03−3209−0751(用具直通)http://www.nittento.or.jp/YOUGU/index.htm ●社会福祉法人日本ライトハウス エンジョイグッズサロン (手開き式の長傘のみ販売) 〒542-0077 大阪市中央区道頓堀(おおさかしちゅうおうくどうとんぼり)1丁目東3−23(盲人情報文化センター道頓堀(どうとんぼり)ビル) 電話 06−6211−8700(用具直通)http://www.iccb.jp/ 写真 女性2人がツインアンブレラをさしている後ろ姿 --------------------------------------------------------------------------------------------------- ■情報資料室コーナー ◎新着案内 たくさんありますが、一部ご紹介します。 ・創元社編集部編 『 BOOKMAP関西図書館あんない』 創元社 2007.10  新書判  384ページ  関西2府4県のあらゆる種類の図書館を徹底調査して紹介する初のガイドブック。  独自性の高い蔵書をもつ「専門図書館」、学外者にも門戸を開いている「大学図書館」そして、日常的に利用できる地元の「公共図書館」の全615館が収録されている。ピア大阪の情報資料室も紹介されています。 写真 『 BOOKMAP関西図書館あんない』の本の表紙 ・大阪社会福祉史研究会編『 大阪における社会福祉の歴史1 』大阪市社会福祉協議会 大阪市社会福祉研修・情報センター 2007.3 B5 172ページ ・内閣府編『 障害者白書 平成19年版 』佐伯印刷 2007.7 A4 274ページ ・野沢和弘(のざわ・かずひろ)『 条例のある街 障害のある人もない人も暮らしやすい時代に 』ぶどう社 2007.1 A5 176ページ ・大阪障害者自立生活協会・編発行 『 重度障害者の地域生活のための総合的支援手法の研究と人材研修事業 事例調査研究報告書 ピアカウンセリングを通じて自立することになった重度障害者に関する調査 』2007.3 A4 55ページ ・大阪障害者自立生活協会・編発行 『 重度障害者の地域生活のための総合的支援手法の研究と人材研修事業 理論研究報告書 ピアカウンセリングと障害者ケアマネジメントの今日的な理論整理 』2007.3 A4 37ページ ・大阪障害者自立生活協会・編発行 『 重度障害者の地域生活のための総合的支援手法の研究と人材研修事業 人材養成研修報告書 』2007.3 A4  80ページ ・『 第23回DPI(ディピーアイ)日本会議全国集会神奈川大会報告書 2007年6月 』2007.10 A4 55ページ ・当事者エンパワメントネットワーク・編発行『 平成18年度障害者ケアマネジメント実務者研修事業報告書 』2007.3 A4 135ページ ・八王子聴覚視覚障害者サポートセンター・編発行『 聴覚障害者・視覚障害者及び盲ろう者対象ピア・カウンセリング報告集ピア・カウンセリングの意義と有効性 』 2007.3 A4 134ページ ・八王子聴覚視覚障害者サポートセンター・編等発行『 聴覚障害者・視覚障害者及び盲ろう者対象ピア・カウンセリング講座開催マニュアル 』 2007.3 A4 132ページ ◎先輩障害者の生きかたにふれてみる ・横塚晃一(よこづか・こういち)(1975)『 母よ!殺すな 』すずさわ書店 四六判 193ページ ・介護ノート編集委員会・編発行(1979)『 はやく ゆっくり 横塚晃一(よこづか・こういち)最後の闘い 』 介護ノート編集委員会編発行 A5 367ページ ・安積純子(あさか・じゅんこ)/岡原正幸(おかはら・まさゆき)/尾中文哉(おなか・ふみや)/立岩真也(たていわ・しんや)(1995)『 生の技法 家と施設を出て暮らす障害者の社会学 増補改訂版』藤原書店 A5 366ページ ・後藤安彦(ごとう・やすひこ)(1995)『 障害者  FORBEGINNERS(フォービギナーズ) シリーズ 』 現代書館  A5 174ページ ・木村浩子(きむら・ひろこ)(1995)『 おきなわ土の宿物語 』小学館 四六判 222ページ ・岸田美智子(きしだ・みちこ)/金満里(きむ・まるり) 編著(1995)『 私は女 新版』長征社 四六判 356ページ ・金 満里(きん・まるり)(1996)『 生きることのはじまり 』筑摩書房(ちくまプリマーブックス) 四六判 224ページ ・遠藤滋(えんどう・しげる)/「えんとこ」上映委員会(1999)『 えんとこ 』 A5 243ページ ・渡辺一史(わたなべ・かずふみ)(2003)『 こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明(しかの・やすあき)とボランティアたち 』北海道新聞社 四六判 463ページ ・大阪人権博物館・編発行(2003)『 聞き書き 障害者の意識と生活』 A5 275ページ ・横田 弘(よこた・ひろし)(2004)『 否定されるいのちからの問い 脳性マヒ者として生きて 横田弘(よこた・ひろし)対談集 』現代書館 A5 262ページ ・三井絹子(みつい・きぬこ)(2006)『 抵抗の証 私は人形じゃない 』  発売・千書房 A5 299ページ ※その他にも、たくさんの本があります。情報資料室までお問い合わせください。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- ■障害者自立支援法、与野党とも大幅な見直しを検討 NPOちゅうぶ 石田義典さん 10月25日、テレビ番組の報道ステーションで「障害者自立支援法、現場の悲鳴」として以下のような特集が組まれた。「名は体を現さない法律・・施行から1年半がたった障害者自立支援法。この法律は障害者が企業で働くのを支援し、地域での自立を図るとしていて、その代わりに福祉サービスの費用の1割負担が盛り込まれた。就労先などの受け皿が整わない中での導入に当初から反対の声が相次いでいたが、今、この法律が当初の理念とはかけ離れ、障害者の生活基盤を揺るがす事態となっている。今回番組では、障害者が仕事をするために集う作業所を取材。費用負担に苦しむ障害者たちの現実を伝える」 イラスト 車椅子の男性がパソコンで作業している様子  障害者自立支援法は2006年4月からそれまでの支援費制度に代わる制度として始まり同年10月にはホームヘルプなども全面改編された。精神障害者を組み込み、就労支援や地域移行をうたい文句としては強調するものだが、実際には原則1割負担、サービス体系の全面的な改編、施設系事業者への報酬の月額払いから日額払いへの変更、報酬単価の引き下げなど悪影響ばかりが実感される法律だと言える。マスコミの報道姿勢も厳しい論調のままだ。 イラスト 5人の男女。真ん中に車椅子の男性  当初から大きな反対と不安の声が 全国で沸き起こり、昨年10月には厚生労働省前の日比谷公園(ひびやこうえん)に1万5000人という障害者運動史上最大規模の人が集まった。政府も大幅な見直しを行い、事業者への補助、利用者負担上限額を4分の1に下げるなどの措置を打ち出した。1200億円という大きな金額であり、政府からすれば厳しさは相当緩和されるはずだったが、法律や内容の枠組みそのものは何も変わらず抜本的な見直し、つまりは障害者自立支援法の廃止を求める声の大きさは変わらなかった。1200億円と言っても利用者負担軽減には240億円のみの配分で残りは施設などの事業者への補填や整備助成。例えば事業者に入る報酬が前年度と比べ90%を下回ればその分を保障するという補填だが、実際には二重三重の制約があり、重度訪問介護に限れば実際に補填された事業者はほぼ0だ。1200億円がどう使われているのかも不透明だ。  単価ダウンと日払い報酬の影響は極めて大きく職員、ヘルパーが辞めていくが求人しても人が来ない。給与の低さと「福祉に夢が持てない」ということでは高齢者福祉などでも共通しており、人材不足は福祉業界全体で起きている。資格制度はますます厳しくなるのに給与アップは望めず事態は相当深刻だ。また移動支援(ガイドヘルプ)など社会参加に必要な施策が市町村事業になったが国からの補助金が削減される中、サービスの切り下げが起こり、市町村格差も進行している。危機的な状況は改善されていない。 イラスト 男性の肘をつかんでいる白状をもっている視覚障害の男性  こうした中、10月30日、日比谷公園(ひびやこうえん)で集会が行われ6500人の障害者、支援者が集まった。今回は会場が日比谷野外音楽堂(ひびややがいおんがくどう)のみで4000人規模の設定だったが、7月の参議院選挙で与党が惨敗、参議院では民主党が第1党になったこと、福田首相も障害者自立支援法の抜本的な見直しを明言する、民主党が1割負担廃止法案を出すなどの動きを受け、予想以上の人が集まり、並行して厚生労働省前でもアピール行動を行った。  今回の集会には 昨年と違い与党議員も含め全党が参加した。野党は民主党の出した見直し案(応益負担廃止法案)に基本的に賛同、与党は自民党と公明党でプロジェクトを作り検討中との発言。自民党と公明党では主張が若干違うが、与党としてはおおよそ次のような内容だった。「みなさんの理解を得ずに法律を作った。『私たち抜きに私たちのことを決めるな』という言葉を胸に秘め、暖かい制度になったと言ってもらえるようにしたい。応益か応能か、ということについては今は応能に近い内容で、収入のある人はちゃんと払えるようにしたい。現在は家族を含めて負担があるが本人のみの収入としたい。そうなればほとんどが非課税世帯になる。またホームヘルプなどの障害福祉サービスと補装具、自立支援医療と合算での負担上限にできないか。人材不足の問題ではヘルパーは給与が月18.8万円、一般労働者33万円と比べ安い。日払いか月払いかの問題があるが、日払いだと利用者が事業者を選びやすいという利点もあり、報酬単価を上げることで人材不足を解消したい。・・・重度訪問介護の単価アップや移動支援、コミュニケーション、相談などの地域生活支援事業への補助を行い、新たな地域格差が起きないようにしたい」また応益負担については「厚生労働省の考えはちょっと乱暴だった」という発言もあった。年金などの所得保障がまったく手付かずの中で「誇りを持って1割を払ってもらえる国にしたい」などの発言にはさすがに大きなヤジが飛んだが、与党としては法律の基本的な枠組みは変えないが、しかしかなり踏み込んだ見直しをしないといけないという認識のようだ。負担上限については1割負担の原則は残しつつ4分の1から8分の1へ、という案も検討されているようだ。  野党からは応益そのものが問題であり、こうした事態が起こることは当初からわかっていたこと、法律の哲学自体が間違っており、きちんと出直すべきだという意見が続いた。具体的には参議院で民主党案を通すことで一致し、衆議院でも議論すること、ただそのためには現在の国会はテロ特措法などで動かなくなっており、国会の会期延長をする必要がある。共産党からは独自アンケートで月1万円以上負担が増えた人が約6割になることや「応益負担」廃止を求める声が9割にのぼったことなどが出された。民主党からは今後、所得保障、障害程度区分、利用負担のあり方などを中心に議論し総合福祉サービス法作成につなげていくとの発言もあった。  民主党からは10月28日、 障害者自立支援法改正法案(障がい者応益負担廃止法案)が参議院に提出されている。主には@定率一割負担の廃止(当面、以前の応能負担に戻す)、A障害児・者福祉サービスを維持するために必要な支援。@のために150億円、Aの事業者への100%保障のために200億円が必要としている。合わせて7つの緊急提言を行っているが、内容は@所得保障の実現、Aサービスの利用抑制についての緊急調査と対策、B障害程度区分認定の見直し、C事業所への従来報酬の100%保障、D地域生活支援事業の実態調査(ちょうさ)と自治体格是正、E精神科病院の退院支援施設の新規設置凍結、F自立支援医療の負担軽減  ホームヘルプ事業の人材確保については 地域で生活する重度障害者への派遣を主に行っている団体へのアンケートから厳しい実態が改めて浮き彫りにされた。1、重度訪問介護を積極的に引き受けた事業所ほど時間単位あたりの単価が低くなる傾向が明らかになった。2、このため61%の事業所で賃金の引き下げを行わざるを得なくなった。3、常勤職員の離職率は27%で、介護保険分野の1.6倍、全産業の2倍に当たる高い率となっている。また、「ヘルパーの勤続年数は3年以内」と回答した事業所は8割にのぼった。4、これらの深刻な人材不足の状況により、76%の事業所が重度訪問介護を必要とする障害者を新たに受け入れられなくなっていると答えている。単価は重度訪問介護(かいご)は1600円〜1800円、介護保険の2000円〜4000円比べても低)く、知的障害者や精神障害者に多い家事援助単価は1500円とさらに低額だ。(詳しくはJIL(ジル)やDPI(ディピーアイ)などから「障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動実行委員会」ホームページを検索して下さい。 イラスト1 男性の乗った車椅子のハンドルを持ち段差を乗り上げようと男性が介助している様子 イラスト2 車椅子の男性と目線が同じようになるようかかんでお話している男性の様子   また大阪府からは 「障害者自立支援法制度の円滑な運営に関する重点要望」として府下の実態調査の結果とあわせかなり抜本的な見直しが要望された。ここでは障害者のサービス利用抑制や事業者の減収、地域生活支援事業での財源不足などのデータと共に施設等の報酬を日額払いから月額払いへ、報酬単価アップ、移動支援を国事業へ、グループホームの世話人を6:1から元の4:1へ、夜間支援体制をすべてのグループホームへ、障害程度区分認定基準の見直しなど法律自体の抜本的な見直しにつながる要望が出され、一見、障害者団体の要望かと思うくらいだ。(ホームページは大阪府→障害者→障害保健福祉室:ニューストピックスと検索して下さい。)  本格的に始まってまだ1年の障害者自立支援法。良くも悪くも政治の動きに大きく影響されている。大阪市でも全庁的な予算カット案が出されているが、どこにどうお金を使うのか、基本的な考え方と共に財源確保での駆け引きも活発化しそうだ。国や自治体の動きに目が離せません。2007年10月31日) ------------------------------------------------------------------------------------------------------ ■お知らせコーナー 廃止になりました「大阪市重度障害者給付金」  大阪市では、毎年12月に重度の障害のある方(身体障害者手帳1・2級または療育手帳Aまたは認定カード所持者)を対象に大阪市重度害者給付金(1級またはA、認定カード10,000円 2級8,000円)が支給されていました。  しかし、この大阪市重度障害者給付金は、今年より廃止になりました。みなさんお間違いのないようにしてください。なお、大阪市内在住の方で進行性筋萎縮症、大阪市小児慢性特定疾患、大阪府特定疾患のいずれかに該当される方につきましては、「大阪市難病見舞金」の申請ができます。詳しくはお近くの区役所にお問い合わせください。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- ■編集後記    ピア大阪ニュースドリーム17号をお届けします。今年度は、「障害の受容」というテーマを取り上げて、連載してきました。なかなか難しい問題ですが、読書の皆さんのお考えも是非お聞かせ下さい。  障害者自立支援法の動向ということで、緊急にNPOちゅうぶの石田さんに、最新情報を書いていただきました。今後もこの問題については取り上げていきたいと思います。 『ピア大阪ニュースドリーム』の入手を希望される方は、お気軽にピア大阪までご連絡下さい。 点字版・テープ版・デイジー版も作成しています。ピア大阪のホームページでもご覧になれます。(Y・N) 2007年11月20日   ------------------------------------------------------------------------------------------------------ 編集人 社会福祉法人 大阪市障害者福祉・スポーツ協会 自立生活支援センター ・ ピア大阪 〒546−0033 大阪市東住吉区南田辺1−9−28 大阪市立早川福祉会館 内  電話 06−6622−1180 Fax06−6622−0423 ホームページhttp://www5.Ocn.ne.jp/~peerosk/ 頒価200円 ------------------------------------------------------------------------------------------------------